
SLAとSLOの違いについて。システム開発・運用で確認する項目とは
クラウドサービスの市場規模が拡大するなか、近年ではシステムの開発・運用をクラウド上で実施するケースが見られています。
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画像引用元:総務省『令和6年版情報通信白書』
システム開発・運用をクラウド上で行う場合、利用するクラウドサービスについてベンダーが規定するSLAやSLOの内容を踏まえておくことが欠かせません。
この記事では、SLAとSLOの目的や規定される項目、違いについて解説します。
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出典:総務省『令和6年版情報通信白書』
目次[非表示]
SLAとは
SLAは”Service Level Agreement”の略で、サービスの品質や可用性などについてベンダーと顧客の間で締結される契約・合意のことです。契約書の一部や、独立した文書として明文化されます。
SLAの目的
SLAの目的は、ベンダーが提供するサービスの品質レベルや責任範囲について、顧客による確認を行うことです。
SLAにおいては、提供されるサービスの内容が客観的な数値で示されて保証されます。SLAを確認することで、顧客はそのサービスが期待しているサービスレベルを満たしているかを判断できます。
サービス内容に対する認識をベンダーと顧客の双方で一致させられるため、サービス利用後におけるトラブルの防止にもつながります。
規定される項目
SLAで規定される項目は、サービス内容や顧客のニーズによって異なります。代表的な項目には、応答時間や稼働率、解決時間などがあります。
▼SLAに規定される項目の例
項目 |
概要 |
応答時間 |
問い合わせやリクエストへの対応までにかかる時間 |
稼働率 |
サービスが正常に稼働している時間の割合 |
解決時間 |
インシデント発生時における解決までにかかる時間 |
SLAの締結時にはこのようなサービスレベルの項目に加えて、責任の範囲や達成されなかった際の補償などについても取り決めます。
SLOとは
SLOは”Service Level Objective”の略で、ベンダーが独自に設定するサービスレベルの目標値を指します。
SLOの目的
SLOの目的は、ベンダーの内部における目標の明確化や意識統一によって、継続的なサービスの改善を実現することです。
SLOはあくまでベンダー側で設定する目標値のため、必ずしも顧客に公開されるものではありません。公開されている場合は、SLAと同様に顧客がサービスレベルを確認する指標としても活用されます。
規定される項目
SLOに規定される項目は、どのような状態を目標とするかによって異なります。一般的には、可用性やセキュリティ、作業手順、サポート体制などが規定されます。
▼SLOに規定される項目の例
項目 |
概要 |
可用性 |
サービスの稼働率やメンテナンス頻度 |
セキュリティ |
サービスにおけるセキュリティ担保の基準・規格 |
作業手順 |
サービスを利用する際の手順やシステムメンテナンス時における作業手順 |
サポート体制 |
問い合わせやトラブルへの対応方法や対応する時間帯 |
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SLAとSLOの違い
SLAとSLOは、目的・規定項目・公開の要否だけでなく、設定数値の基準やペナルティにも違いがあります。
設定数値の基準
SLAとSLOは設定する数値の基準が異なります。
SLAの設定数値が顧客との契約において保証する必要がある数値なのに対して、SLOの設定数値はベンダーの内部における目標値です。そのため、基本的にSLAよりもSLOのほうが厳しい基準の数値を用います。
例えば、SLAで稼働率99.95%を保証する場合、SLOでは稼働率99.99%を目指すことが考えられます。
確実に保証する必要があるSLAよりも厳しいSLOの数値を目指すことで、SLAを守りやすくなる効果も期待できます。
ペナルティ
SLAとSLOでは、達成できなかった際のペナルティに違いがあります。
SLOはあくまでもベンダーの内部における目標のため、目標に届かないことでペナルティが生じることはありません。
一方で、SLAはベンダーと顧客が契約として締結することから、保証されたサービスレベルを達成できなかったベンダーは顧客への補償を求められる可能性があります。
なお、補償の内容は一般的にSLAにおける構成要素の一つとして事前に規定します。
まとめ
この記事では、SLAとSLOについて以下の内容を解説しました。
- SLAの概要
- SLOの概要
- SLAとSLOの違い
SLAはサービスの品質や可用性に関して顧客とベンダーが締結する契約・合意のことです。SLOはベンダーの内部における目標ですが、顧客に公開されている場合にはSLAと同様にサービスの品質・可用性の指標になります。
クラウドサービスを利用してシステム開発・運用を行う際は、ベンダーが規定するSLAやSLOの内容を踏まえたうえで、パフォーマンスの管理や障害対策、セキュリティ対策などを行うことが重要です。
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