
Oracle RACでデータベースの可用性を向上! RAC One Nodeとの違いとは
企業の基幹システムや業務システムにおいて、データベースの「可用性」や「拡張性」は欠かせない要件です。なかでも、ORACLE社が提供する代表的なソリューションがOracle Real Application Clusters(Oracle RAC)です。
複数ノードで1つのデータベースを稼働させることにより、システム障害時のダウンタイムを最小限に抑えつつ、負荷分散や処理能力の拡張を可能にします。
本記事では、Oracle RACの概要と特徴を整理したうえで、システム要件やコストに応じた選択肢となるOracle RAC One Nodeとの違い、RACを利用できるエディションなどを解説します。
データベース運用のトラブル対応における“可観測性”については、こちらの資料をご確認ください。
目次[非表示]
Oracle RACとは
Oracle Real Application Clusters(以下、Oracle RAC)は、Oracle Databaseにクラスタリング機能を追加し、複数のサーバー(ノード)を連携させて1つのデータベースを運用する仕組みです。
すべてのノードがアクティブに稼働し、共有ストレージ上のデータベースへ同時にアクセスできる点が特徴です。
単一のサーバー障害が発生しても処理が途切れることなく継続され、システム全体の高可用性を実現します。さらに、複数ノードでの同時処理により、負荷分散や性能の拡張も可能です。
▼Oracle RACの概要
区分 | 内容 |
データベース構造 |
|
ハードウェア構成 |
|
ソフトウェア構成 |
|
なお、Oracle Databaseについてはこちらの記事で解説しています。
Oracle RACの特徴
Oracle RACの主な特徴は、高い可用性・負荷分散・拡張性の3点に集約されます。
障害時の影響を最小限に抑えながら、業務拡大やアクセス増加にも柔軟に対応することが可能です。
以下では、それぞれのポイントについて整理します。
可用性が向上する
Oracle RACでは、複数のインスタンスが1つのデータベースを管理しています。もし特定のサーバーに障害が発生しても、フェイルオーバー機能によりほかのノードへ処理が自動的に切り替わります。
障害ノードに接続していたアプリケーションも別のノードへシームレスに接続先を切り替えるため、利用者は切り替えを意識することなく業務を継続可能です。
結果、ダウンタイムを最小化し、24時間365日の稼働が求められるシステムでも安定性を確保できます。
フェイルオーバーによる自動切替
ダウンタイムの最小化
クライアント側も途切れない接続
負荷を分散できる
Oracle RACは、1つのシステムのように見えますが、実際には複数のサーバーが並列に稼働しています。
複数のノードが同時にデータベース処理を行うため、システム全体の負荷を分散できます。クライアントからの接続要求は、ランダムあるいは負荷の少ないノードへ自動振り分けされるため、特定のサーバーに負荷が集中することを防げます。
結果、急激なアクセス増加や高負荷処理が発生しても、システム全体の安定したパフォーマンスを維持しやすくなります。
拡張性を確保できる
Oracle RACはスケールアウトに対応しており、運用中でもインスタンスを追加できます。新しいノードを組み込むだけでシステム全体の処理能力を強化できるため、既存のサービスを停止することなく柔軟な拡張が可能です。
小規模な構成からスタートし、負荷やデータ量の増加に応じて段階的にリソースを増やしていくといった計画的なシステム運用も実現できます。
Oracle RACを利用できるエディション
Oracle RACは、主に Enterprise Edition(EE) で利用可能な追加費用オプションとして提供される機能です。エンジニアド・システム版(EE-ES)でも同様に利用可能です。
さらに、クラウド環境においては Exadata Cloud Service(ExaCS) や Oracle Database Cloud Service Enterprise Edition – Extreme Performance(DBCS EE-EP) に付属機能として含まれています。
一方で、Standard Edition 2(SE2)やクラウドの DBCS SE/DBCS EE では、基本的にOracle RACは利用できません。SE2では、12cまではDBサイズ制限付きで利用可能でしたが、19cではRACが利用不可となり、23ai以降はRACもRAC One Nodeも完全に利用できなくなっています。
Oracle RAC One Nodeについては、12cまではSE2でも制限付きで利用可能でしたが、19c以降はSE2では利用不可です。Enterprise Edition(EE/EE-ES)では追加オプションとして、ExaCSでは付属オプションとして引き続き利用可能であり、23ai以降もEE/ExaCSでの利用は継続されています。
導入を検討する際には、エディションごとのRAC利用可否や、追加費用オプションか付属かといったライセンス体系を正しく理解しておくことが、コスト最適化や運用トラブルの回避につながります。
エディション / サービス | RAC利用可否 | ライセンス体系 |
Standard Edition 2(SE2) | 利用不可(バージョンによって異なる)
| – |
Enterprise Edition(EE) | 利用可能 | 追加費用オプション |
Enterprise Edition – Engineered Systems(EE-ES) | 利用可能 | 追加費用オプション |
Oracle Database Cloud Service – SE | 利用不可 | – |
Oracle Database Cloud Service – EE | 利用不可 | – |
Oracle Database Cloud Service – EE-EP | 利用可能 | 付属オプション |
Oracle Exadata Cloud Service(ExaCS) | 利用可能 | 付属オプション |
Oracle RAC One Node(EE / EE-ES / ExaCS) | 利用可能(バージョンによって異なる)
| EE/EE-ESは追加費用、ExaCSは付属 |
Oracle RACとOracle RAC One Nodeの違い
Oracle RACとOracle RAC One Nodeは、いずれもOracle Databaseで高可用性を実現するための仕組みですが、構成方法や用途に明確な違いがあります。
Oracle RAC:複数ノードで同時にインスタンスを稼働させ、負荷分散と高可用性を両立するクラスタ型構成
Oracle RAC One Node:通常は1ノードで稼働し、障害発生時のみ待機ノードにインスタンスを自動的に移動(フェイルオーバー)させる仕組み
上記の違いにより、可用性や拡張性、運用コストの観点で最適な選択肢が変わります。なお、Oracle RACとOracle RAC One Nodeの違いについて、詳細は以下を参考にしてください。
▼Oracle RACとOracle RAC One Nodeの違い
項目 | Oracle RAC | Oracle RAC One Node |
ノード数 | 複数ノードが同時稼働 | 1ノード+待機ノード |
可用性 | 非常に高い(ノード障害時も即時切替・並列稼働) | 高い(障害時のみ自動フェイルオーバー) |
負荷分散 | 可能(複数インスタンスで同時処理・スケールアウト) | 不可(同時稼働は1ノードのみ) |
拡張性 | 高い(ノード追加により処理能力を容易に拡張) | 限定的(基本は単一ノード稼働) |
コスト | 高め(複数ノード分のライセンス・運用費用) | 抑えやすい(シンプル構成、ライセンス負担軽減) |
用途 | 大規模・ミッションクリティカルシステム向け | 中小規模・コスト重視環境向け |
まとめ
この記事では、Oracle RACとOracle RAC One Nodeに関する以下の内容について解説しました。
Oracle RACの概要
Oracle RACの特徴
Oracle RACを利用できるエディション
Oracle RAC One Nodeとの違い
Oracle RACは、複数ノードを並列稼働させることで、障害時のダウンタイムを最小化しつつ、負荷分散とスケーラブルな拡張を実現します。
一方、Oracle RAC One Nodeは「通常は1ノード稼働+障害時に自動切替」という仕組みにより、可用性はやや制限されますが、その分導入・運用コストを抑えやすい構成です。
両者の違いを正しく理解し、システム規模や予算に応じて選択することで、企業のデータベース基盤に求められる安定性と柔軟性をバランスよく確保できます。
『日本エクセム』では、データベースの設計から構築、移行に至るまでのプロセスを一貫してサポートしています。データベースを活用する業務内容に応じて、最適なデータベースの設計と運用を支援します。
データベース運用のトラブル対応における“可観測性”については、こちらの資料をご確認ください。