
システム監視・運用の属人化はなぜ起きる?属人化を解消する標準化とAI活用
システム監視・運用では、障害時の判断や対応方法が特定の担当者に依存し、異動・退職によってノウハウが失われるといった属人化が起こることがあります。特に、少人数で運用を担う情報システム部門(以下、情シス)では、一人に複数の業務やシステムの知識が集中しやすくなります。
属人化を解消するには、手順を整えるだけでなく、システムの状態や判断基準を共有し、誰でも対応しやすい環境を整えることが大切です。AIや自動化を活用し、一次切り分けなどを支援する方法もあります。
この記事では、情シスで起こりやすい属人化の原因とリスク、可視化・標準化・ナレッジ化、AI活用による解消方法を解説します。
なお、データベースができるエンジニア不足に悩んでいる、「データベースの運用を整理していきたい」と考えている企業は、こちらの資料も併せてご覧ください。
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なぜシステム監視・運用は属人化するのか
システム運用の属人化は、担当者個人の問題だけで起こるものではありません。
日々の障害対応や設定変更を優先するなかで、判断の経緯や対処方法が記録されない状態が続くと、運用ノウハウが少しずつ個人に蓄積します。
暗黙知と場当たり的な対応が積み重なる
障害発生時には、サービスの復旧が優先されます。そのため、「過去にも似た障害があったのでこのログを確認する」「この数値になったら設定を見直す」といった経験に頼って対応し、復旧後の記録まで手が回らないケースがあります。
こうした対応が続くと、同じアラートでも担当者によって確認方法や判断が異なり、監視ツールやマニュアルがあっても、実際の運用は個人の経験や記憶に依存しやすくなります。
人手不足や担当者の異動・退職が属人化を表面化させる
少人数でシステム運用を担う組織では、一人が複数のシステムや業務を兼任することがあります。長期間同じシステムを担当している人には、構成情報だけでなく、「この時間帯は負荷が上がりやすい」「このアラートは別システムの処理と連動している」といった運用上の知識も集まりやすくなります。
担当者が在籍している間は問題なく運用できていても、休職や異動、退職をきっかけに、共有されていなかった知識が明らかになることがあります。人員を追加するだけでは解消しにくいため、個人が持つ知識をチームで利用できる状態へ移していく必要があります。
DBA(データベース管理者)が不足している現状や求められるスキルなどについては、こちらの記事で解説しています。
監視・運用で起こりやすい属人化の例
システム監視・運用では、例えば次のような状態が属人化につながります。
領域 | 属人化している状態の例 |
アラート対応 | 通知を受けたあとに何を確認するかが担当者によって異なる |
障害調査 | 特定の担当者だけが必要なログや確認箇所を把握している |
設定管理 | 閾値や監視設定を変更した理由が記録されていない |
エスカレーション | 誰へ、どの段階で連絡するかが明確になっていない |
復旧対応 | 過去の対応方法が個人のメモや記憶に残っている |
特定の担当者が詳しいこと自体が問題なのではありません。その知識をほかの担当者が利用できず、不在時に運用へ支障が出る状態になっていることが課題です。
システム運用の属人化を放置するとどうなるか
属人化した運用でも、通常時には大きな問題が見えないことがあります。しかし、障害発生や担当者の離脱などをきっかけに、その影響が表面化します。
退職・異動によって運用ナレッジが失われる
担当者の異動や退職が決まってから引き継ぎを始めても、日々の判断基準まで短期間で共有することは難しい場合があります。
監視設定や手順書を引き継げても、「なぜその設定になっているのか」「どの数値が変化したら注意するのか」といった背景情報まで残っていないケースもあります。
その結果、後任担当者が一からシステムの挙動を調べ直したり、問題が発生するたびに外部ベンダーへ確認したりする状態につながります。
障害対応に時間がかかり、品質にも差が生じる
対応方法が標準化されていないと、同じ障害でも担当者によって確認する項目や順序が異なります。
経験のある担当者は原因候補を絞り込みやすい一方、経験の浅い担当者では、複数のログや監視画面を確認しながら調査する必要がある場合があります。
また、障害のたびに特定の担当者へエスカレーションする運用では、その担当者に負荷が集中します。属人化を減らすことは、人員交代への備えだけでなく、障害対応の進め方や品質をチーム内で揃えることにもつながります。
脱属人化の基本は「標準化・可視化・ナレッジ化」
システム運用の脱属人化では、担当者が持つ知識をすべてマニュアルへ書き出すことだけが目的ではありません。
監視対象や判断基準を揃え、チームが共通の情報から判断できる状態を整えることが基本になります。
監視項目と対応手順を標準化する
まず、「何を監視するのか」「異常を検知したら何を確認するのか」を整理します。例えば、次のような項目です。
監視対象と監視項目
アラートを発報する条件
一次確認する情報
担当者が実施できる対応
エスカレーションする条件と連絡先
復旧後に記録する内容
定型的な対応は、ランブックとして手順を整理する方法もあります。ランブックは、繰り返し発生するシステム運用作業を標準化する手段の一つです。
ただし、手順書を作成したまま更新しなければ、システム変更後も古い内容が残る可能性があります。障害対応や構成変更に合わせて見直す運用まで決めておくことが大切です。
誰が見ても同じ状況を把握できるよう可視化する
担当者ごとに参照する監視ツールやデータが異なると、判断基準も揃いにくくなります。そこで、サーバー、アプリケーション、データベースなどの状態を、チームで共通して確認できる環境を整えます。
CPU使用率やメモリ使用量などの変化だけでなく、複数レイヤーの情報や前後の変化まで確認できれば、原因を調査する際の判断材料を共有しやすくなります。ベテラン担当者の経験に依存していた調査方法を、チームで再現しやすい状態へ近づけることにもつながります。
対応履歴をナレッジとして蓄積・再利用する
障害対応が完了したら、結果だけでなく、原因を調査した過程も記録します。
例えば、「どのアラートから調査を始めたか」「どのデータを確認したか」「どの対応で復旧したか」といった情報を残しておけば、同様の事象が発生した際に活用できます。
ナレッジは、長い報告書として毎回まとめる必要はありません。インシデント管理ツールやチケット、ランブックなど、日常の運用フローのなかで更新できる形にすると継続しやすくなります。
AI・可観測性で運用の属人化をどこまで減らせるか
AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)など、AIや機械学習をシステム運用に活用する方法があります。
AI活用の目的は、経験豊富な担当者を置き換えることではありません。大量の監視データの整理や一次切り分けを支援し、特定の担当者だけに判断が集中する状態を減らすことにあります。
AIによって一次切り分けを支援する
AIをシステム監視に活用すると、関連するアラートをまとめたり、過去のインシデントなどから確認すべき情報を提示したりできます。
例えば、AIOpsでは、アラートノイズの削減や関連するインシデントの提示、トリアージ、定型作業の自動化などにAI・機械学習が利用されています。これまでベテラン担当者が経験から判断していた「まずどこを確認するか」を提示できれば、経験の浅い担当者も調査を進めやすくなります。
一方、本番環境に影響する設定変更や復旧操作では、提示された情報の根拠や影響範囲を確認し、担当者が判断できる運用体制を整えておくことが大切です。
関連記事:「AIを活用したシステム監視」
観測データとAIを組み合わせて担当者の判断を支援する
AIを運用に活用する際は、分析や判断の材料となる観測データを取得できる状態も必要です。
例えば、「サーバーの負荷が高い」という情報だけでは、アプリケーション、データベース、ネットワークのどこで問題が起きているのかを判断しにくい場合があります。複数レイヤーの状態を横断して確認できれば、原因を調査するための判断材料をチームで共有しやすくなります。
こうした観測データを共通の情報として確認できる環境を整えることは、AIを活用した分析を支えるだけでなく、特定の担当者しかシステムの状態を把握できない状況を減らすことにもつながります。
システム運用の脱属人化を進める3つのステップ
システム運用の属人化は、一度にすべてを解消しようとするのではなく、影響の大きい業務から段階的に見直す方法があります。現在の運用状況を整理したうえで、改善の効果を確認しながら対象を広げていきます。
STEP1|「可視化→標準化→部分自動化」の順に進める
まず、システムで何が起きているのかをチームで確認できる環境を整えます。
そのうえで、頻繁に発生するアラートや定型的な障害対応を整理し、判断基準や対応方法をランブックなどにまとめます。手順が定まった作業は、アラートの集約や情報収集、定型コマンドの実行などから部分的な自動化を検討します。
現状が整理されていないまま自動化すると、担当者しか把握していなかった判断基準までブラックボックス化する可能性があります。まず運用状況を可視化し、標準化できる部分を整理したうえで、自動化する範囲を検討する流れが適しています。
STEP2|対象を絞って始め、効果を確認する
すべての運用業務を一斉に変更するのではなく、属人化による影響が大きいシステムや業務から見直します。効果を確認する際は、例えば次のような指標を利用できます。
障害の一次切り分けにかかる時間
復旧までの平均時間
特定担当者へのエスカレーション件数
手作業で行っている定型作業の件数
ランブックやナレッジを利用して対応できた割合
「属人化が解消したか」という抽象的な評価だけでなく、障害対応にかかる時間や特定担当者への集中度がどのように変化したかを確認することで、次に見直す領域を判断しやすくなります。
STEP3|ツールと外部の専門知識を組み合わせる
社内だけで監視・運用体制を整えることが難しい場合は、可観測性ツールや外部の専門サービスを組み合わせる方法もあります。
日本エクセムの「exemONE」は、アプリケーションからインフラ、データベースまでを横断して可視化し、開発・運用・DBチームが共通の情報からシステムの状態を確認できる環境を提供しています。
また、データベース領域では「SmartDBAサービス」を提供しており、MaxGaugeを用いた継続的なモニタリングや月次診断、DBエンジニアによる調査・分析、定常的なDBA業務の支援などに対応しています。
監視・運用の可視化に加えて、専門性の高いデータベース領域で外部の知見を活用することも、特定の担当者へ負荷や知識が集中しにくい運用体制を整える選択肢の一つです。
まとめ
システム監視・運用の属人化は、知識や判断基準が特定の担当者に集中し、ほかのメンバーが同じように対応できない状態から生じます。こうした状態を減らすには、手順の標準化だけでなく、システムの状態を共通の情報から確認できる環境や、対応履歴を継続して蓄積する仕組みが必要です。
また、AIによるアラート整理や一次切り分け、定型作業の自動化を組み合わせることで、担当者による判断や対応のばらつきを抑えやすくなります。まずは属人化の影響が大きい業務を洗い出し、可視化・標準化・部分自動化の順に見直していくことがポイントです。
日本エクセムでは、システムの状態を横断的に可視化する「exemONE」や、DB運用を支援する「SmartDBAサービス」を提供しています。監視・運用の属人化や、DBA業務の負荷集中に課題を感じている場合は、日本エクセムへご相談ください。

