
Oracle AI Database 26aiの特徴・従来版との違いを徹底解説
Oracle Databaseは、長年エンタープライズ向けの基幹データベースとして進化を続けてきましたが、近年は生成AIや大規模言語モデル(LLM)の普及を受け、AIワークロードを前提としたデータベースへと舵を切っています。
2024年以降は、従来のOracle DatabaseをAIに最適化した「Oracle Database 23ai」が登場しました。その流れをさらに加速させる次世代のAIデータベースとして位置付けられているのが「Oracle AI Database 26ai」です。23aiで導入されたAI機能をより深くデータベース・エンジンに統合し、オンプレミスやマルチクラウド環境でもAIを前提としたアプリケーションを構築できるプラットフォームとして発表されています。
本記事では、ビジネスの意思決定を加速させるOracle AI Database 26aiの機能や性能を最大限に引き出すための運用戦略について解説します。
目次[非表示]
Oracle AI Database 26aiの基本概要
Oracle AI Database 26aiは、AIモデルとデータベース・エンジンをより密接に統合した、次世代のリレーショナル・データベースです。最大の特徴は、高度なベクトル検索(Vector Search)や生成AIとの連携が、SQLインターフェースを通じてシームレスに実行できる点にあります。
これにより、開発者は複雑なAIパイプラインを外部に構築することなく、データベース内部で高精度な検索や推論を行うことが可能です。
企業のミッション・クリティカルなデータを保護しながら、最新のAI技術を即座にアプリケーションへ組み込める環境を提供しています。
なぜAIネイティブなデータベースが求められているのか
現代のビジネス環境において、データの爆発的な増加と生成AIの普及により、非構造化データ(テキスト、画像、音声など)から価値を引き出すスピードが競争力の源泉となっています。従来の仕組みでは、AI処理のためにデータを外部へ移動させる必要があり、レイテンシやセキュリティのリスクが課題でした。
AIネイティブな設計を採用したOracle AI Database 26aiは、データの移動を最小限に抑え、データが存在する場所でAIを実行します。
結果として、リアルタイムな洞察と、大企業の基幹システムにも耐えうる高い信頼性を両立させたデータ活用が可能になります。
Oracle AI Database 26aiの機能
基盤となるAIテクノロジー
テクノロジー名 | 概要 |
統合ハイブリッドベクトル検索 | AIベクトル検索とリレーショナル、テキスト、JSON、ナレッジグラフ、空間検索を組み合わせ、ドキュメントや画像、動画などの取得を可能にする技術です。LLMと組み合わせることで、公開データとプライベートデータの両方を加味した回答を提供できるようになります。 |
MCPサーバーのサポート | LLMを活用したAIエージェントが反復的な推論を用いてデータベースにアクセスし、質問に答えられるようにします。様々な観点から検索や追加データの取り寄せを行い、適切で正確な答えを導き出します。 |
組込みのデータ・プライバシー保護 | データベース内で高度なセキュリティ、プライバシー、コンプライアンスのルール(エンドユーザーごとの可視化制限や未許可データの動的マスキングなど)を適用します。プライベートデータを露出することなくAIが直接アクセスできるようになります。 |
Oracle Exadata for AI | ハードウェアとソフトウェアの一体設計により、AI処理を大幅に高速化します。AIベクトルクエリのストレージへのオフロード、超低レイテンシのRDMAアルゴリズム、小規模から利用できるExascaleアーキテクチャなどを備えています。 |
Private AI Services Container | 埋め込みモデルやオープンウェイトLLMなどをプライベート・インスタンスで実行するための環境を提供します。データをサードパーティと共有せずに済むため、AIワークロードのセキュリティが向上します。 |
NVIDIAによるAIデータベース・アクセラレーション | LLMプロバイダーや「NVIDIA NeMo Retrieverマイクロサービス」と統合し、NVIDIA NIMを用いたベクトル埋め込みモデルの実行やRAGパイプラインの実装を可能にします。将来的にはNVIDIAのアクセラレーテッド・コンピューティングの利用も予定されています。 |
エンタープライズ全体でのAIと分析
テクノロジー・機能名 | 概要 |
Oracle Autonomous AI Lakehouse | 「Apache Iceberg」のオープン表形式をサポートし、主要な4つのクラウド(OCI、AWS、Azure、Google Cloud)やDatabricks、Snowflakeとの相互運用が可能です。Exadataによる高パフォーマンスと、従量課金制のサーバーレス・スケーリングを提供します。 |
アプリケーション開発のためのAI
テクノロジー・機能名 | 概要 |
データ注釈 | データの目的、特性、セマンティクスをAIに説明する機能です。これによりAIが自然言語の質問により正確に答えたり、より良いアプリケーションを生成したりできるようになります。 |
統合データ・モデル | リレーショナル(SQL)、JSON、グラフの各データ・モデルを統合し、同じデータに対して任意の形式でアクセスできるようにして開発の生産性を向上させます。 |
Select AI Agent | データベース内でAIエージェントを構築、展開、管理できるフレームワークです。内部ツールやREST経由の外部ツール、MCPサーバーもサポートし、多段階のエージェント型ワークフローを自動化します。 |
AIプライベート・エージェント・ファクトリー | ノーコードでAIエージェントを構築・展開できるフレームワークです。データをサードパーティに共有することなく、任意の環境(コンテナ)でセキュアに動作させることができます。 |
APEX AIアプリケーション・ジェネレーター | 自然言語インターフェースを利用してユーザーの質問に答えたり、エンタープライズクラスの業務アプリケーションを自動生成したりする次世代の開発ツールです。 |
ミッションクリティカルなイノベーションとセキュリティ
テクノロジー・機能名 | 概要 |
量子耐性アルゴリズム | データの伝送中暗号化向けにNIST承認の量子耐性アルゴリズム(ML-KEM)を実装しています。保存データ向けの暗号化と組み合わせることで、将来の量子コンピュータを用いた復号リスクからデータを保護します。 |
Oracle Database Zero Data Loss Cloud Protect | OCI上のリカバリサービスを利用し、オンプレミスのデータベースにおける変更内容のリアルタイム保護や迅速なリカバリを行い、データ損失やランサムウェアから保護します。 |
Globally Distributed Database | 一つの論理データベースを複数に分割・分散して格納することで、非常に高いスケーラビリティやデータ主権をサポートします。データ損失ゼロで3秒未満のフェイルオーバーも実現します。 |
True Cache | トランザクションの一貫性を自動的に確保する中間層キャッシュです。開発者がコードを書く必要はなく、中間層キャッシュ上でAI機能(Vector、JSON、Spatialなど)を実行できます。 |
SQL Firewall | 不正なSQLアクティビティやインジェクション攻撃に対して、データベース内でスケーラブルな保護を提供します。 |
出典:日本オラクルプレスリリース「Oracle AI Database 26aiがAIデータ革命を加速」
Oracle AI Database 26aiの性能を最大化するための戦略
Oracle AI Database 26aiを導入するだけでは、そのポテンシャルを十分に引き出すことはできません。
AIワークロードと従来のトランザクション処理、分析処理をどのように共存させ、リソースを配分するかが、設計・運用上の重要なポイントになります。
ベクトル検索と従来SQL処理の共存最適化
最大の強みは、顧客属性や取引履歴といった構造化データと、テキストや行動ログなどから生成したベクトルデータを、単一のSQLクエリで組み合わせて検索できる点にあります。この利点を最大化するには、以下のような観点が有効です。
インデックスの使い分け: 完全一致・範囲検索には従来の B-treeやビットマップインデックスを、曖昧な意味検索や類似検索にはベクトルインデックスを用い、クエリパターンに応じて適切に併用する。
実行計画の確認: EXPLAIN PLANや自動チューニング機能を用いて、ベクトル検索部分が過剰な全件走査になっていないか、並列度が適切かを定期的に確認する。
リソース管理: ワークロード・グループやリソースマネージャを活用し、AIワークロードがトランザクション処理を圧迫しないようCPUやメモリ、I/O を制御する。
ワークロード分析によるチューニング手法
Autonomous AI Databaseでは、リソース使用状況やクエリ統計を分析し、ボトルネックとなっているクエリやオブジェクトを特定するためのアドバイザ機能が提供されています。
AI Vector Searchを含むワークロードのチューニングでは、ベクトルの次元数や類似度計算の精度設定(近似検索のパラメータ)、インデックス構成などが性能に大きく影響します。
そのため、アドバイザやモニタリング機能を活用しながら段階的にパラメータを調整していく運用が現実的です。
まとめ
Oracle AI Database 26aiは、従来のデータベースの枠を超え、データとAIプロセスを完全に統合したAIネイティブなプラットフォームです。23aiで導入されたベクトル検索や生成AI連携をさらにエンジン深部へと統合し、データの移動を最小限に抑えながら、機密性の高いエンタープライズデータを保護しつつ最新のAI技術を即座に活用できる環境を実現しました。
性能を最大限に引き出すためには、自律型(Autonomous)機能による自動最適化や、ベクトル検索と従来のSQL処理を組み合わせたハイブリッドな設計戦略が鍵となります。
19cや21cといった従来版からの移行には、マルチテナント・アーキテクチャへの対応やベクトル化プロセスの設計といった準備が必要ですが、これらを乗り越えることで、アプリケーションコードの大幅な簡素化とリアルタイムな洞察の獲得が期待できます。

