
PostgreSQLとMySQLの違いを徹底比較|OSS DBの選び方と運用の最適解
OSSデータベースの利用は世界的に広がり、PostgreSQLとMySQLは中心的な選択肢となっています。選定にあたっては、アーキテクチャの違いや拡張機能、レプリケーション方式といった技術的な特徴を理解するだけでなく、運用体制や人材確保といった現場視点の検討も欠かせません。さらに、導入後には性能劣化や障害対応、属人化リスクなどの「運用の壁」が待ち受けており、安定稼働を実現するための仕組みや支援サービスの活用が重要になります。
本記事では、PostgreSQLとMySQLの特徴を比較しながら、選定時の判断材料と運用課題への実践的な対応策をまとめました。データベース基盤を長期的に成長させたい方にとって、有益な視点を提供できる内容なので、ぜひ最後までご覧ください。
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OSSデータベースとしての位置づけ
オープンソースのデータベースは、従来の商用製品と比較してコストや柔軟性に優れるだけでなく、クラウドやDevOpsの普及に伴い急速に導入が広がっています。以下では、PostgreSQLとMySQLの利用が拡大している背景や企業導入の実態、安心して採用できる根拠について解説します。
PostgreSQLとMySQLが選ばれる背景
PostgreSQLとMySQLは、OSSの代表格として幅広い分野で利用が進んでいます。主な理由は、以下のとおりです。
低コストで導入可能 | 商用製品のようなライセンス料が不要であり、スタートアップから大企業まで採用障壁が低い |
柔軟性とカスタマイズ性 | ソースコードが公開されているため、自社の要件に合わせた調整が可能 |
コミュニティとエコシステム | 世界規模の利用者による知見やツールが提供され、常に最新の環境を整備できる |
MySQLは高速な読み取り処理や幅広いCMSへの採用実績があり、PostgreSQLは複雑なトランザクションやJSONなど多様なデータ型を標準で扱える点が評価されています。
オープンソースDBの成長と企業利用の拡大
かつて基幹システムの多くはOracleやSQL Serverなどの商用製品が中心でした。しかしクラウド環境の普及とともに、OSSの活用は大規模領域へも拡大しています。
特にAWSやGCPのようなクラウド事業者が提供するマネージドサービスは、運用管理の負荷を軽減しながら高い可用性を確保できる点が導入を後押ししています。
PostgreSQLは四半期ごとの安定したリリースを続け、商用システムに必要な堅牢性と拡張性を備えており、MySQLも長期サポート版が公開され継続的な改善が図られているのです。
結果、OSSデータベースは小規模開発用途に留まらず、企業の基幹業務やクラウド基盤の主要コンポーネントとして利用されるようになりました。
「OSSでも安心して使えるのか?」という不安
OSS導入に際しては、安定稼働への懸念が必ず議論されます。代表的な論点は以下のとおりです。
- トラブル発生時のサポート体制の有無
- セキュリティ要件や監査対応の実現可能性
- 運用やパフォーマンス調整に必要なスキルの確保
実際には、PostgreSQLやMySQLには商用ベンダーによる支援が用意され、主要クラウド事業者のマネージドサービスを通じてセキュリティや可用性の確保が可能です。
さらに、豊富なユーザーコミュニティにより改善が続けられており、信頼性の面でも商用製品と遜色なく運用できる段階に到達しています。結果「低コストだがリスクが大きい」という印象は過去のものとなり、OSSは本番システムでも十分に採用できる選択肢として定着しています。
PostgreSQLの特長と利用シーン
PostgreSQLは、商用製品に匹敵する堅牢性と拡張性を備えたOSSとして成長を続けています。高度なアーキテクチャに加え、トランザクション処理や運用性でも強みを持ち、多様な分野で採用が拡大しています。以下では代表的な特徴と活用シーンをまとめました。
Oracleに似たアーキテクチャと高度な機能
PostgreSQLは商用DBであるOracleと共通する設計思想を持ち、拡張性や標準SQLへの準拠度の高さで評価されています。
- SQL標準に忠実であり、複雑なクエリを効率的に処理可能
- JSONやXML、地理空間情報など幅広いデータ型を扱える
- 金融や医療など高い整合性が求められる業務領域での利用実績が増加
PL/SQLからPL/pgSQLへの移行が進んでいる事例もあり、商用製品に依存しない選択肢として注目を集めています。総合的に見て、PostgreSQLは柔軟かつ先進的な機能群を備えたOSSといえます。
OLTP系システムで選ばれる理由
オンライン取引処理を支える基盤として、PostgreSQLは特に力を発揮します。ACID特性を厳密に保持し、同時アクセスが集中する環境でも安定的に動作する仕組みが整っています。
- ACID特性の完全なサポートにより、一貫した処理を保証
- マルチバージョン同時実行制御(MVCC)によって高い並行性を維持
- 公共機関や金融機関の基盤における採用が拡大
複雑な処理を扱うシステムでも性能を落とさず稼働できる点が評価され、商用DBの代替ではなく実用的な第一選択肢として定着しつつあります。
管理性が高くツール組込み利用にも強い
運用管理の観点でも、PostgreSQLは優位性を示しています。管理者が利用できるGUIツールや拡張機能が充実しており、システム全体のライフサイクルを効率的に把握できます。
- pgAdminによる直感的な操作やバックアップ管理
- pg_stat_statementsによるSQL実行状況の分析
- クラウド事業者が提供するマネージドサービスとの親和性の高さ
上記の要素が組み合わさることで、企業は大規模環境でも安心して採用できる運用基盤を構築できます。結果として、PostgreSQLは管理性と拡張性の両立を実現するOSSとして広く支持されています。
MySQLの特徴と利用シーン
MySQLは軽快な処理性能と導入のしやすさを兼ね備えたRDBMSとして、長年にわたり幅広い分野で利用されてきました。特にストレージエンジンの仕組みや読み取り性能の高さ、Webサービスとの親和性により、多くの開発現場で最初に選ばれる選択肢となっています。以下では、MySQLの主な特徴と利用領域について解説します。
ストレージエンジンによる拡張性の高さ
MySQLの大きな特長の一つに、用途に応じてストレージエンジンを選択できる仕組みがあります。
- トランザクション管理を重視する場合:InnoDB
- 高速な参照を優先する場合:MyISAM
- メモリ常駐型の高速処理を求める場合:MEMORY
エンジンの切り替えにより、同じMySQLでも性質を柔軟に変えられる点が支持されてきました。実際、最新バージョンでもInnoDBを中心とした機能強化が継続しており、安定性と性能の両立が図られています。
MySQL公式サイト/InnoDBストレージエンジン解説(MySQL公式ドキュメント)
大量データを高速検索するユースケース
MySQLは読み取り性能に優れるため、大量の参照や検索を主体とする環境で力を発揮します。代表的なユースケースは、以下のとおりです。
- 大規模Webサービスのユーザーデータベース
- アクセス解析やログデータの保存・検索
- コンテンツ配信サービスにおけるメタデータ管理
複雑なトランザクションよりも、大量アクセスを効率的にさばくことが求められる領域において、高速な処理を実現します。そのため、高トラフィックを前提としたサービス基盤では重要な選択肢となっています。
ネットサービス・オンラインサービスでの強み
Webやオンラインサービスとの親和性の高さは、MySQLを特徴づける大きな要素です。歴史的にLAMPスタックの一角を担ってきた背景もあり、開発者にとってもっとも身近なデータベースと認識されています。
- WordPressやDrupalといったCMSに標準採用されている
- AWSやGCPなどのクラウド環境でマネージドMySQLが提供されている
- PHPなどWeb技術との統合性が高く学習コストが低い
上記の要素が組み合わさり、Web開発の領域では導入のしやすさと運用の効率性を兼ね備えたRDBMSとして根強い支持を受けています。クラウド環境における活用も広がり、オンラインサービスの基盤として存在感を高めています。
PostgreSQL vs MySQL機能比較
PostgreSQLとMySQLはいずれもOSSデータベースとして確立された地位を持ちますが、設計思想や得意分野には違いがあります。トランザクション管理やデータ型の扱い、スケーラビリティ・セキュリティの強さなど、利用環境に応じた適切な選択が求められます。以下で、PostgreSQLとMySQLをそれぞれ比較しましょう。
トランザクション処理とACID準拠性
PostgreSQLはACID特性を厳格に維持し、複雑な業務処理でも一貫性を保証します。一方、MySQLもInnoDBを利用すればACIDを満たしますが、設計上は軽快な処理と効率を優先する傾向があります。
基幹系システムや金融分野ではPostgreSQLが多く採用され、Web分野ではMySQLの高速性が支持されているのです。
データ型・拡張機能の充実度
PostgreSQLは配列やJSON、XML・地理空間情報(PostGIS)など多彩なデータ型を扱える点が強みです。拡張機能によって用途を広げられるため、構造化データと非構造化データを同時に処理できます。
MySQLは標準機能をシンプルに保ち、導入や学習を容易にする方向で発展してきました。したがって、高度なデータ処理を必要とする場面ではPostgreSQLが適し、軽量性を求める場合はMySQLが有効です。
レプリケーション・スケーラビリティの違い
PostgreSQL・MySQLいずれもレプリケーション機能を備えていますが、アプローチや実装の方向性には違いがあります。
項目 | PostgreSQL | MySQL |
実装の歴史 | 長らく限定的だったが近年機能を拡充 | 早期からマスタースレーブ方式を導入 |
主な仕組み | ストリーミングレプリケーションやロジカルレプリケーションに対応 | 読み取り専用ノードを水平分割してスケールアウト |
強み | クラウドやマイクロサービス環境で柔軟に活用可能 | 大規模Webサービスにおける利用実績が豊富 |
レプリケーションの運用実績や安定性を重視する場合はMySQLが適し、最新技術を活用して柔軟な構成を設計したい場面ではPostgreSQLが選ばれる傾向にあります。
セキュリティ・監査要件から見た比較
PostgreSQLは公共機関や金融領域での導入実績が豊富で、細かい権限管理やロールベース制御を標準で備えています。
さらに拡張を用いることで監査ログや暗号化の強化も可能です。MySQLもSSL通信や権限管理をサポートしますが、高度な監査機能はエンタープライズ版に依存する部分が大きいのが現状です。
高度なセキュリティ基準を要求される業務基盤ではPostgreSQLが選ばれ、標準的な要件で十分なサービス基盤にはMySQLが導入されています。
PostgreSQL vs MySQL 機能比較表
項目 | PostgreSQL | MySQL |
トランザクション処理 | ACID特性を厳密に実装し、複雑な処理でも整合性を確保 | InnoDB利用でACID対応可能だが、思想は高速処理寄り |
データ型・拡張機能 | JSON, XML, 配列, PostGISなど幅広いデータ型と拡張機能をサポート | 基本的なデータ型中心で、シンプルさを重視 |
レプリケーション | ストリーミングやロジカル方式に対応し、柔軟な構成が可能 | マスタースレーブ方式に強みがあり、大規模Webで実績豊富 |
セキュリティ・監査 | 権限管理が詳細で、拡張により監査ログや暗号化も実装可能 | 標準的なセキュリティは十分だが、高度機能はエンタープライズ依存 |
利用シーン | 金融、公共、医療など厳格な一貫性が求められるシステム | Webサービス、オンラインアプリ、CMSなど高トラフィック処理に強い |
DB選定後に直面する「運用の壁」
データベースは選定や導入がゴールではなく、その後の「運用フェーズ」こそが重要となります。
- 利用規模の拡大に伴う性能劣化や突発的なトラブル
- 希少なDBA人材への過度な依存
- 長期的な安定稼働を維持するための仕組みづくり
上記はどの企業も避けて通れない現実であり、運用の壁として立ちはだかります。選定時には見過ごされがちな要素ですが、実際にはビジネス継続性を左右する最重要ポイントなのです。
性能劣化や突発トラブルの調査負担
データベースは導入直後こそ快調に動作しますが、利用者が増えたりデータが蓄積したりすると、応答速度の低下やパフォーマンスの悪化が徐々に表面化してきます。さらに、アクセスの急増や不適切なクエリによって、予期せぬ障害が発生するケースも少なくありません。
そのため、DBエンジニアはログや各種メトリクスを丹念に解析し、「いつ」「どの処理」が引き金になったのかを特定しなければなりません。調査には膨大な時間と労力を要するため、本来注力すべき開発や改善の取り組みが停滞するというのが現場で直面する課題です。
DBA不足と属人化リスク
企業の現場では、データベース管理を専門に担うDBAの不足が慢性的な課題となっています。IT人材のなかでもDBAは特に希少で、採用のハードルも高いため、限られた人材に依存せざるを得ない状況が少なくありません。結果、特定の担当者に業務が集中し、属人化が避けられない構造が生まれます。
万一、キーパーソンが退職や異動によって現場を離れると、蓄積された知見やノウハウが一気に失われ、日々の運用が立ち行かなくなるリスクがあります。とりわけOSSデータベースを採用した組織では「人材不足」の影響をより強く受けやすいでしょう。
長期的な安定稼働を実現する仕組みの必要性
データベースは一度導入すれば終わり、というものではありません。長期的に安定稼働させるための仕組みを整えることが欠かせないのです。
具体的には、定期的な性能診断や監視体制の強化、セキュリティパッチの適用、さらには障害発生時に即応できる手順の整備など、計画的な運用基盤を築く必要があります。
加えて、事業の拡大に合わせてデータベース環境の拡張が避けられないため、将来的な移行やスケールアップを前提とした戦略的な運用設計も不可欠です。導入時には見落とされがちですが、多くの企業が頭を悩ませているのが実情です。
日本エクセムが提供するDB運用支援
データベース運用では、リアルタイムの稼働監視と障害発生前の予兆把握が欠かせません。日本エクセムは、可視化と分析を担うMaxGauge、そしてリモート支援と予防型管理を実現するSmartDBAを通じて、現場が直面する課題に対応しています。
監視による迅速な原因究明から事前対策を組み込んだ改善サイクルまでをカバーする支援体制により、運用担当者の負担を軽減しながら長期的な安定稼働を実現可能です。
MaxGaugeによる稼働状況の可視化と分析
データベースの安定運用においては「現在システムで何が起きているかを正確に把握できるかどうか」が重要です。日本エクセムが提供する MaxGauge は、Oracle や SQL Server を含む各種データベースの稼働状況を、年中無休でリアルタイムに可視化・記録できる監視ツールです。
導入により「特定の時刻に、どのセッションでどのSQLが実行されたか」を正確に遡って確認できます。突発的な障害が発生しても原因の切り分けを素早く行えるため、調査にかかる工数を大幅に削減し、対応品質の向上にも直結します。
さらに、収集されたデータは障害対応にとどまらず、将来的な性能低下の兆候を見抜いたり、計画的なチューニング施策を立案したりする際にも活用可能です。
SmartDBAによるリモート支援と予兆管理
多くの企業において、専任のDBAを社内に配置することは難題であり、大きな経営課題の一つです。課題解決の手段として、日本エクセムは「SmartDBA」というリモート支援サービスを提供しています。
サービスは月額制で利用でき、以下の支援を受けられます。
- 定期的な稼働チェックを実施し、異常の兆候を早期に把握
- 障害やトラブル発生時に迅速な調査を実施
- セキュリティパッチ適用やベンダー調整を含む幅広い運用支援
SmartDBAは問題発生後の対応にとどまらず、改善サイクルを事前に組み込み、リスクを未然に抑えるプロアクティブ型の仕組みを採用しています。プロアクティブ型の特性によって、運用担当者の負担が軽減され、システム全体の安定稼働が長期的に維持されます。
まとめ
この記事では、PostgreSQLとMySQLの違いについて以下の内容を解説しました。
- OSSデータベースとしての位置づけ
- PostgreSQLの特長と利用シーン
- MySQLの特徴と利用シーン
- PostgreSQL vs MySQL機能比較
- DB選定後に直面する「運用の壁」
- 日本エクセムが提供するDB運用支援
OSS DBを導入する際に重要なのは機能比較だけでなく、導入後の運用をどう設計し、支援サービスや監視基盤をどう組み合わせるかという点です。適切な仕組みを備えることで、長期的な安定稼働とビジネスの成長を支える強固なデータ基盤を構築できます。
『日本エクセム』では、データベースの設計・構築から運用まで幅広くサポートを提供しています。特に、監視や日常運用、障害予防といった観点から安定的なデータベース運用を実現するノウハウを提供しており、情報システム部門の負担軽減にも貢献しています。
なお、データベース運用において、「データベースができるエンジニアが不足している」「データベースの運用を整理していきたい」とお悩みの企業さまはこちらの資料も併せてご確認ください。
