
マルチテナントとは?仕組み・メリット・アーキテクチャ選定のポイントをDB運用者向けに解説
クラウドサービスやSaaSが当たり前となった今、多くの企業が採用している方式として「マルチテナント」が挙げられます。ただし、単に環境を分離して使う仕組みと捉えるだけでは不十分です。実際の現場では、性能のばらつきやノイジーネイバーの発生、さらにはセキュリティ要件など、シンプルな説明では収まりきらない課題が立ち上がってきます。
本記事では、マルチテナントの基本構造からメリット・デメリット、シングルテナントとの違い、そして可観測性を向上させるための具体的なポイントまでを体系的に解説していきます。
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マルチテナントとは?
マルチテナントとは、複数の利用組織(テナント)が同一基盤を共有しつつ、論理的に分離された状態でサービスを利用する方式を指します。クラウドやSaaSの普及に伴い一般化した概念で、アプリケーションからデータベース、ネットワークまで分離のレイヤーは多様です。データベース運用者にとっては、単なる「共有環境」ではなく、どの層で分離を担保しているかを理解することが重要です。特に性能、セキュリティ、障害影響範囲の観点で誤解が生まれやすいため、まず基礎概念を整理します。
「テナント」とは何か:クラウド・SaaSにおける利用者の論理的分離
「テナント」とは、SaaSをはじめとするクラウドサービスにおいて、サービスを契約・利用する単位のことです。
利用するサービスの性質や提供形態によって、単位は大きく変わります。企業全体をひとつのテナントとして扱う場合もあれば、部署ごと、あるいは個別の顧客ごとにテナントを切り分けるケースもあります。
特に注目すべきは、マルチテナント型のSaaSが「組織向けのSaaS」として設計されている点です。つまり、B2B向けのサービスでは、企業やチーム単位での利用を前提とした設計が行われており、個人ユーザー向けのシンプルなB2C型SaaSとは根本的に異なる思想で構築されています。
マルチテナントアーキテクチャではサーバーやデータベース、アプリケーションといった物理的なリソースは複数のテナント間で共有されますが、各テナントのデータやアクセス権限は厳密に分離され、互いに干渉しない設計が施されています。AWSのアカウント管理やSalesforceの組織IDといった仕組みも、テナントの概念を実装した代表例です。運用を担当する立場で重要なのは物理的な分離ではなく、論理的な分離によってプライバシーと独立性を担保しているという点を理解することです。
システムの柔軟な拡張が可能になる一方で、アプリケーション層やデータベース層における精密な分離設計が欠かせません。テナントを明確に設計することで顧客の増加に対応しやすいスケーラビリティや、ビジネスモデルに応じた柔軟なカスタマイズ性を実現できます。
マルチテナントの全体像:アプリ・DB・インフラのどこで分離するか
マルチテナントでは、複数の利用者が同じサーバーやデータベース、インフラを共有しながらも、それぞれが独立した環境で動作しているように見せる必要があります。システムのどの層で、どのような方法で分離を行うかという設計判断が極めて重要です。
分離の方法は、大きくデプロイパターンとデータ分離パターンに分けられます。デプロイパターンには、以下があります。
すべてのテナントがひとつのシステムインスタンスを共有するプールモデル(共有型)
テナントごとに独立したインフラやDBを用意するサイロモデル(個別型)
サーバーは共有するがデータベースは個別に持つといったハイブリッドモデル(ブリッジモデル)
プールモデルはコストとスケーラビリティを重視し、サイロモデルは隔離性とセキュリティを優先する設計です。ハイブリッドモデルは、両者のバランスをとりながら柔軟に構成できる点が特徴です。
さらに、データベース運用の観点では、どのレベルでデータを切り分けるかが設計の分岐点となります。以下に、代表的な分離レイヤーとその特性をまとめました。
分離レイヤー | 主な方法 | 特徴 |
アプリ層 | テナントIDによる処理分岐 | 開発の自由度が高いが複雑度も上昇 |
DB層 | スキーマ分離 / テーブル分離 / 行レベル分離 (Row-level security) | データ分離の安全性に直結 |
インフラ層 | VPC・Namespace分離 | セキュリティ強度は高いがコスト増加 |
データベースを中心とした運用設計では、スキーマ単位で分けるか、テーブル単位で分けるか、それとも行レベルのセキュリティで制御するかという選択が、性能要件やテナント数の規模によって大きく変わってきます。
また、グローバル展開を見据えたSaaSでは、エンドユーザーが利用する機能を担うアプリケーションプレーンと、テナント管理や認証を司るコントロールプレーンを明確に分離することで、システム全体の柔軟性と保守性を高める設計手法も有効です。
データベース運用担当者が押さえるべき誤解されやすいポイント
DB運用者が特に誤解しがちなポイントは、マルチテナント=共有DBで単にテナントIDを付けるだけという認識です。実際には、隔離方式により運用負荷やセキュリティ強度が大きく異なります。また、マルチテナント環境ではテナントごとの負荷特性が偏ることが多く、ノイジーネイバー問題(特定テナントの過負荷)が必ず考慮点になります。さらに障害分析の際は、テナント単位のメトリクス取得が不可欠です。これらは単一構成では問題になりにくいため、運用設計での想定が欠かせません。
マルチテナントのメリット
マルチテナントのメリットは、シングルテナント環境では実現しにくい特性であり、SaaSプロバイダや大規模な顧客基盤を抱える企業にとって、ビジネス成長を支える重要な基盤となります。
ここでは、運用担当者の視点からマルチテナントのメリットを掘り下げて解説します。
スケーラビリティとリソース最適化(コスト削減効果)
マルチテナント構成では、複数のテナントが同じリソースを効率的に共有することで、リソース使用率を平準化し、無駄を最小限に抑えられます。たとえば、あるテナントがCPUを多く消費する時間帯と別のテナントがI/Oを多用する時間帯がずれていれば、全体として高いスループットを維持しながら、リソースの稼働率を最大化できます。
シングルテナント構成では、各テナントごとに余裕を持たせたリソース設計が求められますが、マルチテナントでは複数テナント間でバッファを共有できるため、待機リソースを最低限に抑えながら総合的なコストを大幅に削減できるのです。
さらに、クラウド基盤ではオートスケール機能と組み合わせることで、需要の増減に応じた柔軟な拡張・縮小が可能になります。新規顧客の追加時にも、個別にインフラを構築する必要がなく、設定変更だけで迅速に環境を提供できるため、ビジネスの成長スピードに合わせたスケール戦略を実現できます。
運用効率化:パッチ・バージョンアップの集中管理
マルチテナントの大きな魅力のひとつが、運用作業を一元管理できる点です。すべてのテナントが同じアプリケーション基盤とデータベース環境を共有しているため、パッチ適用やセキュリティアップデート、バージョンアップといった作業を共通のソースコードに対して一度実施するだけで全テナントに反映できます。
シングルテナントのようにテナントごとに個別の作業スケジュールを調整し、繰り返し同じ手順を踏む必要がある運用と比べて圧倒的な効率化を実現します。また、メンテナンス計画も全テナント共通で立案できるため、更新漏れやバージョンのばらつきといったリスクを大幅に低減できます。システム運用が基本的にサービスプロバイダー側で完結するため、ユーザー側が以下の運用負荷を意識する必要がありません。
OSやアプリケーションの保守
サーバーの入れ替え
セキュリティ対策
多数の顧客を抱えるSaaS事業では、個別カスタマイズを抑制し、システムを標準化することが保守コストの増加を防ぐポイントとなります。結果として、運用にかかる自社の労力やコストを最小化し、本来注力すべきビジネス活動や顧客対応に集中できる環境が整います。
予兆検知・可観測性(Observability)との相性の良さ
マルチテナント環境の運用ではテナント単位での負荷データが自然に集約されるため、システム全体の挙動や異常の兆候を把握しやすくなります。特に、あるテナントの行動パターンが急激に変化したり、アクセスが急増したりした際には、他の複数テナントの正常な基準値(ベースライン)と比較することで変化点をより正確に検知できます。さらに、共通基盤であるため、監視対象となるポイントも統一しやすく、ログ・メトリクス・トレースといった可観測性の三本柱を連携させた高度な監視体制を、効率的に構築できます。運用担当者は、個々のテナントに合わせて監視項目を増やす必要がなく、一元的な監視設計で全体を網羅できるため、運用負荷の最小化と品質向上を同時に達成できるのです。
マルチテナントアーキテクチャのコントロールプレーンには、メトリクスや請求管理などの機能が含まれています。特にテナントを意識した運用メトリクス(テナントアクティビティ、リソース使用量、テナントあたりのコストなど)を設計段階から組み込むことで、システムの技術的健全性だけでなくビジネス的な健全性も測定できるようになります。
マルチテナントのデメリット
マルチテナントには数多くのメリットがある一方で、共有基盤という性質上避けられないリスクや運用上の制約も存在します。
データベース運用担当者にとって重要なのは「共有環境だから影響範囲が広い」という表面的な理解にとどまらず、性能面・セキュリティ面・障害復旧の観点でどのような設計上の課題が生じるのかを具体的に把握しておくことです。
マルチテナントのデメリットは、適切なアーキテクチャ選定や監視体制の強化によって緩和できますが、対応を後回しにすると運用負荷の急増や深刻なインシデントにつながる恐れがあります。以下では、マルチテナント運用において特に注意すべきデメリットについて解説します。
障害発生時の影響範囲の拡大(ノイジーネイバー問題)
共有基盤を採用する上で最も懸念されるのが、特定のテナントが引き起こした異常負荷が他のテナントにまで波及する「ノイジーネイバー(騒がしい隣人)問題」です。たとえば、あるテナントが大量のデータ処理を実行し、CPUやディスクI/Oを過度に消費すると、同じデータベースを共有している他のテナントにも遅延や応答不良が発生します。マルチテナントシステムにおいて対処が必須の課題であり、放置すれば全体のサービス品質を大きく損なう原因となります。
さらに、セキュリティ侵害が発生した場合も、リソースが共有されているため、すべての顧客データがリスクに曝される可能性があるでしょう。影響範囲(Blast Radius)の拡大リスクは、シングルテナント環境では個別に完結するため顕在化しにくい問題です。障害調査の際にも、どのテナントが原因なのかを切り分けるには、テナント単位でのメトリクス可視化とログ分析の仕組みが不可欠です。
対策としては、問題となっているテナントを個別のインフラへ一時的に隔離する仕組みや、利用可能なコンピューティングリソース量に応じた料金プランを設定することで、テナントのリソース使用を調整する手法が有効です。PostgreSQLにおけるRow Level Security(RLS)とリソース制限の組み合わせなど、負荷制御やリソースガバナンスの設計を初期段階から組み込むことがマルチテナント運用の成否を分けるポイントとなります。
セキュリティ・データ分離の高度化要件
論理的な分離によって複数のテナントのデータを同一基盤で扱うマルチテナント環境では、シングルテナント以上に精密で堅牢なセキュリティ設計が求められます。具体的には、以下のような多層的な対策が必要です。
行レベルセキュリティ(RLS)によるアクセス制御の強化
スキーマ単位やテーブル単位での分離設計
暗号化キーのテナント別管理
監査ログの粒度向上
同一のサーバー上に無関係な複数の顧客が混在するため、データが他のユーザーのものと混ざったり、情報漏洩が発生したりする可能性をゼロにはできません。リスクを最小化するには、サービス開発の初期段階からテナント間のデータ漏洩防止を明確に設計し、テナント境界を厳格に定義する必要があります。誤った実装や権限設定のミスがあると、データ漏洩リスクが顕著に高まり、致命的なインシデントに直結します。
また、データベース運用においては、以下のような高度なセキュリティ対策が重要です。
RBAC(ロールベースアクセス制御)によるユーザー権限の厳密な管理
データの静止時および通信時の暗号化
監査ログの徹底的な記録と分析といった
人的エラーによるセキュリティリスクもシングルテナントに比べて高くなる傾向があるため、運用フローの見直しや自動化の導入も重要です。外部監査(SOC2やISO 27001)やセキュリティレビューを通じて、分離の仕組みが明示可能であることを証明する必要もあり、設計段階からの対策が欠かせません。
性能劣化・急増アクセスへの対応難易度
マルチテナント環境では、テナント間でアクセス量やワークロードの特性が大きく異なることが一般的です。そのため、ユーザーの利用が集中する時期や時間帯には、リソースの競合によってパフォーマンスが低下する恐れがあります。
前述のノイジーネイバー問題に起因しますが、特定のテナントが急激なスパイクアクセスを発生させると、データベースのキャッシュ効率が低下したり、ロック競合が生じたりして、他のテナントにも性能の影響が広がるでしょう。
また、特定テナントだけの性能改善(たとえば専用インデックスの付与)が、他のテナントに悪影響を与えるケースもあり、単純なチューニングでは対処しきれない状況が生じます。クエリパターンの詳細な分析やキャパシティプランニングの精緻化、テナントごとのレート制限やスロットリング機能の導入など、高度な運用スキルと継続的なモニタリング体制が求められます。
シングルテナントとの違いを徹底比較
マルチテナントとシングルテナントは、単に"複数のテナントをひとつにまとめるか個別に分けるか"という二元論では不十分で、分離方式の選択や監視体制の構築、SLA設計に至るまで総合的に比較検討する必要があります。ここでは3つの観点から、マルチテナントとシングルテナントの違いを詳しく整理します。
アーキテクチャ比較(物理分離・論理分離)
マルチテナントとシングルテナントの根本的な違いは、リソースの共有方法と分離方法にあります。マルチテナントは、ひとつのシステムインスタンスやサーバーを複数のユーザーが共有する論理的分離の方式です。システムは仮想化技術やハイパーバイザーなどを用いて仮想的に分割され、各テナントには割り当てられた領域が提供されます。
一方、シングルテナントは、サーバーやデータベースなどのリソースを1社のみが占有するモデルです。テナントごとに個別の専用リソースセットが用意される、物理的分離の形態といえます。
マルチテナントのデプロイモデルには以下があり、サービスの要件に応じて柔軟に選択されます。
リソース共有を最大化するプールモデル(共有型)
テナントごとにインフラやDBを分離するサイロモデル(個別型)
中間に位置するブリッジモデル(ハイブリッドモデル)(サーバーは共有し、データベースは個別など)
なお以下は、両者のアーキテクチャ特性をまとめたものです。
項目 | マルチテナント | シングルテナント |
分離モデル | 論理分離(スキーマ/行レベル) | 物理分離(専有DB・専有VM) |
柔軟性 | 高い(スケールしやすい) | 低い(拡張に手間) |
障害影響 | 広がりやすい | 個別で完結 |
最適化 | テナント横断で最適化可能 | テナントごとに最適化 |
マルチテナントは設計の選択肢が広い反面、どの層で分離の強度を担保するかが課題になります。シングルテナントは初期構成が明確で、安定性や可観測性の要件設計も比較的シンプルです。
運用コストとスケール戦略の比較
運用コストとスケール戦略は、アーキテクチャ選択において最も重要な判断軸のひとつです。シングルテナントでは、テナントごとに独立した環境を持つため、パッチ適用・バージョンアップ・監視設定といった運用作業が個別に発生します。
新規顧客を追加する際には新しいインスタンスやインフラを構築する必要があり、リソースとコストが増加します。複数のソフトウェアインスタンスのメンテナンス、保護、最適化は複雑になり、大規模なチームが必要になる傾向があります。そのため、導入・運用コストが高くなるのが特徴です。
対してマルチテナントは、リソースを共有し、システム運用保守をサービスプロバイダーが一括して行うため、低コストでスピーディに環境を構築・利用できます。新規テナントの追加は設定変更だけで済むことが多く、円滑な拡張性を実現できる点が大きな強みです。
インフラやメンテナンスを一元化できるため、全体のコストを抑えながら、無駄な待機リソースを減らし、バッファを最低限にすることが可能です。特にSaaS事業では「利用者が増えるほどシングルテナント方式は運用管理が指数的に複雑化する」という課題があるため、長期的な視点ではマルチテナントが圧倒的に有利とされています。
SLA・性能要件・セキュリティ要件での選定ポイント
アーキテクチャの選定は、SLA(稼働率)・性能要件・セキュリティ要件という3つの軸を総合的に評価して行う必要があります。
セキュリティや厳格なSLAが最優先される場合、シングルテナントが最適です。シングルテナントはリソースが完全に分離されているため、情報漏洩リスクが低く、比類のない性能とスループットが実現されます。特に医療機関や金融機関など、業界の規制や企業ポリシーでリソースやデータの共有が禁止されている場合はシングルテナントを選択すべきです。
SLAが多様でなく、共通ワークロードが中心であれば、マルチテナントが適しています。低コストかつスピーディな導入、標準機能での要件充足、運用負荷の軽減を求める場合は、マルチテナントが圧倒的に有利です。性能要件についてもテナント間で大きな偏りがなく、ある程度平準化されている場合はマルチテナントの効率性が最大限に発揮されます。
セキュリティ要件では、規制業種(金融・医療など)では物理分離が求められるケースが多く、一般的なSaaSでは論理分離が標準となっています。選定の際には、以下の観点を総合的に考慮し、最適なアーキテクチャ(またはハイブリッド型)を選ぶことが求められます。
サービスの特性
求められるセキュリティレベル
取り扱う業務の重要性
将来的なカスタマイズの必要性
顧客属性やワークロード特性、そして自社の運用体制を総合的に評価することが、長期的な成功のポイントです。
マルチテナントの可観測性を強化するうえで『MaxGauge』が重要となる理由
マルチテナント環境では、テナントごとに負荷やアクセスパターンが異なるため、全体のどこで異常が起きているかを素早く特定できる“可観測性”が運用品質を左右しますMaxGaugeは、こうした複雑性を可視化し、テナント単位の予兆検知・性能分析・トラブル切り分けを効率化する専門ツールです。
以下では、重要ポイントを視覚的に整理します。
問題対応を「事後把握」から「予兆検知」へ転換する
■ 従来の監視(課題)
障害発生後に調査 → 調査に時間がかかる
テナントごとのどこで問題が起きたか見えにくい
“起きた後に対応”するためビジネス影響が大きい
■ MaxGauge の強み
観測ポイント | どのように効くか(効果) |
セッション監視 | 過負荷テナントを即座に特定 |
待機イベント分析 | DB内部で何が詰まっているかを可視化 |
SQLトレース | 重いクエリの実行元テナントを把握 |
I/O・CPU基調のリアルタイム監視 | スパイクの原因を瞬時に検出 |
■ 効果イメージ
Before:障害 → 調査 → 原因特定
After :異常傾向 → 事前検知 → 先回り対処
24×365の稼働データが生む“運用意思決定力”
長期間のデータ蓄積は、マルチテナント環境では“ほぼ必須の要件”です。理由は 「テナントごとの利用パターンの差」が大きいため、短期ログでは全体像がつかめない ためです。
■ 長期データ蓄積の主なメリット
活用領域 | 得られるメリット |
負荷パターン分析 | テナント別ピーク時の明確化 |
急増アクセスの予測 | シーズナリティや周期性を数値化 |
チューニングの根拠形成 | SQL改善・インデックス戦略の判断に利用 |
キャパシティプランニング | 将来のDB構成・クラウドリソース最適化 |
■ 運用改善の流れ
24×365でデータ収集
テナント別に利用特性を分析
ボトルネックの恒常化・周期性を把握
アーキテクチャ改善やチューニングへ反映
上記のプロセスにより、MaxGaugeは単なる監視ツールではなく、マルチテナント運用全体の意思決定を支える情報基盤として機能します。
まとめ
マルチテナントは、クラウドやSaaSに不可欠なアーキテクチャとして、リソース最適化や運用効率化といった大きな利点を提供します。一方で、共有基盤ゆえの性能劣化やノイジーネイバー問題、セキュリティ確保といった高度な要件への対応も求められます。アーキテクチャ選定では、SLA、セキュリティ基準、ワークロード特性を総合的に比較し、マルチテナントとシングルテナントのどちらが業務要件に適するかを慎重に判断することが重要です。
また、運用フェーズにおいては、テナント単位の負荷可視化や予兆検知を実現できる可観測性ツールが不可欠となります。特にMaxGaugeのようなDB分析基盤は、日々の監視精度を高めるだけでなく、長期的なキャパシティ計画や性能改善の精度向上にも寄与します。マルチテナント運用を成功させる鍵は、分離モデルの理解と継続的な可観測性強化にあります。

